国土交通省補助事業

「名工家」プロジェクトは平成21~22年度に国土交通省「地域木造住宅市場活性化推進事業」に採択されました。

「地域木造住宅市場活性化推進事業」とは、共同して地域木造住宅市場の活性化に資すると認められた事業について、国が事業に要する費用の一部を補助する制度です。名工家プロジェクトは、地域木造住宅市場における意義が認められ、採択されました。

事業概要

愛知県の工務店4社の共同化により、高品質の木造住宅生産と維持管理のために、大工・専門職を共通のものさしで評価し、施工品質を担保する生産、そして維持管理のプラットホーム化を行う。また大工の出口問題への一つの解として、高齢者大工の経験、技能、地域顧客との信頼関係を活かす仕組みづくりに関する事業を行う。

(1)人材のプラットホーム化

大工を含めた専門職に対して、その職業能力基準を設定し、今後必要とされる職業能力の枠組みを検討、必要能力のプラットホーム化を行うことで、ネットワーク内での優秀な大工・専門職の融通や育成の仕組みを作り出す。また、「現場マナーマニュアル」等の作成と研修を通じて、優れた現場力をもった生産チームとしてのインセンティブ形成を目指す。

技術力から顧客対応までを含めた技能評価ポイントを各職毎に共通化した「ものさし」として確定することで、専門職自身の職業能力として目指すべき方向性や工務店の大工等の育成方針が明確になる。また、職業能力保持のプライドを尊重する意味で、「名工家」合同研修会において、優秀技能者を顕彰するなど、品質力向上と顧客満足度の向上に寄与するインセンティブを与える仕組みを作り出す。

(2)家守りのプラットホーム化

「名工家」では既に点検システムを自社顧客から管理工務店不在の「残宅」へと広げる試みを行ってきたが、自社顧客対象の家守りから、地域の家守りへと展開を本格化する。このためには専任の点検スタッフが必要となると同時に、家守りの品質を担保するため、共通の点検ソフトを活用したプラットホームを構築する。また、顧客別の「家守りデータ」を保存する。このような維持管理のプラットホームを作ることで、家守りの水準を担保することができる。

また、地域コミュニティづくりの一環として、既存顧客を対象に「暮らし方交流会」、「自分でできるメンテナンス教室」等を共同で開催する。

さらに今年度は、「住宅管理」というビジネススキームがどうしたら成り立つのかの実験を行う。近年、管理工務店不在のストックが増加し、ストックとしての価値持続を放棄した住宅が多い。こうした住宅に対して、定期的な有料点検によってその価値が持続し、快適な暮らしが可能となることを告知し、住まいに対する不安を解消する。このような「住宅管理」ビジネスが今後の高齢化社会における工務店の存在理由となる。

(3)高齢化大工の活用

高齢化した大工は、退職後基礎年金のみの支給を受ける場合が多く、月額で多くて約8万円程度が現状である。これでは若年層が大工職へ参入するシナリオを描くことは困難であり、若年層の参入不足は出口問題と直結している。

そこで、卓越した技能者の老後の一つのあり方を示すことで、若年大工に対する刺激剤となる仕組みとして、管理工務店不在の住宅に対する定期点検のビジネスモデルを立ち上げる。将来的には、高齢の大工たちが「家検大工」として、住宅の定期点検に訪問し(軽微な修繕等はその場で対応できる)、月額10万円の収入を得ることを目標とし、大工の出口問題に対して一つの回答を、地域に根付いた家守りという形で出していく。

また、地元の元請大工が高齢化等により資金調達、法適合した受注を行えないケースも増加しており、顧客からの信頼性を尊重しつつ、受注不可能大工に代わって仕事を引き継ぐ(家づくりと家守り業務)エージェント活動も、地域住宅市場における受注主体のスムースなバトンタッチの仕組みとして必要となる。こうした活動は、名工家のようなネットワーク工務店だからこそ大工、顧客双方の信頼を得ることが可能となる。こうした大工たちは、単なる顧客紹介を行うだけではなく、木工事部分を手間受けするケースも考えられ、ここに若年大工を配することによって、若年大工のOJTにも繋がり、人材育成の場としての効果も期待される。

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